熟年再婚しても年金分割の金額は変わらない。年金は夫婦で築き上げる財産
離婚した後に熟年再婚をした場合、お金に関しては複雑なルールが絡んでくる可能性があるので注意が必要です。
その最たるものが、年金分割。
「夫婦で築いた財産を分け合う」というのが基本的な考え方ですが、熟年再婚した場合はどうなるのでしょうか。
年金分割について知っておきたいルールをまとめました。
婚姻期間中に納めてきた年金(厚生年金)の保険料も「財産」を考え、離婚するにあたってそれを分割できるというのが、この制度の基本的な概念。
熟年再婚した場合、その分割した分の年金記録はどうなるのでしょうか?
例えば、「厚生年金に加入しているサラリーマンの夫と、年収130万円未満の妻」を想定して考えてみます。
離婚するにあたって年金分割をした場合、夫は「年金記録を分けてあげた」、妻は「年金を分割を受けた」側と考えられます。
このようなケースで離婚して、元夫が熟年再婚した場合。
元妻が受け取れる年金は減ってしまうのではないかと思われるかもしれませんが、実際は影響ありません。
年金分割は、あくまでも「二人が婚姻関係にあった期間に納めた保険料」の記録を元にしたものなので、夫が再婚しようとも金額は変わらないのです。
では、逆に妻のほうが熟年再婚したらどうなるのでしょうか?
年金分割の根本には、「離婚によって専業主婦が経済的に困窮することがないように」という救済の概念があります。
再婚相手がお金持ちであれば経済的に困ることはないでしょうから、元夫からの年金分割はそこでストップしてしまうのではないか?と思われますが、実際はこちらも影響ナシ。
新しいパートナーが大富豪であろうとも、元夫と過ごした結婚生活が消失するわけではありませんよね。
ですから、元妻が受け取れる年金分割分は変わりません。
当然、元夫が受け取る年金額が増えるわけでもない。
元夫側からしてみれば「おいおい、アイツは再婚したんだから、もう年金分割は必要ないだろう」と、不平等感を抱くかもしれませんが、あくまでも分割するのは過去の記録。
その点は納得するしかありませんね。
では、元夫、もしくは元妻が熟年再婚した後に亡くなった場合はどうなるのでしょうか。
元夫が亡くなった
新しい妻が、遺族厚生年金を受け取ることになります。
その金額は元夫が厚生年金に加入していた期間と報酬額を元に算出されるので、
- 元妻が受け取る年金分割分は変わらない
- 新しい妻が受け取る遺族厚生年金は減ってしまう
ということになり、新しい妻が騒ぎ出すとちょっとしたトラブルが勃発するかもしれませんね。
元妻が亡くなった
新しい夫に、遺族厚生年金が支払われることになります。
この金額は、元夫と分け合った年金分割分がベースになりますので、元夫の年金額は変わりません。
「相手はもう亡くなったのに、それでも分割した分は戻ってこないのか。それってちょっと変じゃないの?」
とモヤモヤするかもしれませんね。
このように、年金分割は「分割した側(上記の場合だと元夫)」が不利になるケースが多いような印象を受けます。
- 「家庭内においては、お金を稼いでいた人だけがエライわけではない」
- 「それを支えていた人もまた、労働していたのだ」
- 「だから、当然の権利として年金を受け取ることができる」
そんなメッセージすら感じ取れますね。
昨今は女性もバリバリ稼いでいる時代ですから、肩身の狭い思いをしている専業主婦の方も多いかもしれません。
が、少なくとも日本は、制度上は今でも専業主婦の仕事を尊いものとして認めてくれているようですよ。
年金分割の基本的な考え方や、熟年再婚に伴って起こり得る問題について見てきました。
押さえておきたいポイントを整理します。
- 年金分割は、夫婦が共に築いた財産を分け合うことの一つのカタチ
- 年金を「分けてもらった」ほうにメリットが多い制度である
- 専業主婦の存在価値を認めている制度、とも受け取れる
このように、夫婦で築いた財産たる「年金記録」は相手が再婚しようともゆるぎなく残っていくものです。
二人で過ごす1日1日が未来の生活を支えていく。
年金分割は「夫婦」という関係の重みを改めて気づかせてくれる制度だなと感じました。
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